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白馬岳

山行日
    2003年6月30日   薄曇り    単独

コース
    白馬村猿倉→白馬尻荘→白馬岳→白馬尻荘→白馬村猿倉

白馬岳の花(スライドショー、画像1.38M)


 昨年の秋、蓮華温泉から白馬岳を往復した。目的の一つは、白馬岳の西隣にかまえる旭岳への登頂であった。残念ながら、天候の悪化で旭岳へのルートは断念した。そのページの終わりに、“来年7月頃に、次は猿倉から旭岳を日帰りで来よう”、と書いた。梅雨の晴れ間、絶好のチャンスとばかり、出かけたのでる。

 4:25、猿倉駐車場出発、上空は一面の雲、所々に真っ黒い雲、青い空もちょっと見えていた。猿倉荘の横手から入ると、直ぐに林道歩きとなる、向かう稜線部は雲がたれこめ、晴れるか降るか予想の出来ない、成り行き任せの山行となった。10分ほど歩いて鑓温泉への分岐点を通過した。道端のイタドリは背丈ほどに茂っている、ヘアーピンカーブを5,6回繰り返し林道が終わり、登山道となる。キヌガサソウ、サンカヨウ、シラネアオイ、ショウジョウバカマが咲誇っていた、残雪を踏みしめて程なく白馬尻荘着、5:13。

 上の小屋の前を通ると、小屋の人が何か試案顔をして眺めている様子だった。「おはよう御座います、雪の状態はどうですかね」、と尋ねると、「大雨で、土石流が発生し小屋が押しつぶされてしまった」、と言って指を指す。見るとそれは不気味な様相をしていた。雪渓が真っ黒で、ぼこぼこと穴があいていた、4年前のこの時期にYさんと歩いた時とは全然違う。小屋は奥まで土砂で埋まり、これからシーズンを迎える矢先、大変気の毒に思えた。そして、「どこまで行くの?」、「雪渓に出てしまえば大丈夫だと思うけど、歩いていないし、道がはっきりしないから、ヒビに気をつけて歩いて下さい」、と注意してくれた。

 アイゼンを付け、目印の赤い紐を出し、準備を整えて5:30雪渓に踏み入れた。自然の脅威なのか、それはスゴイ、土砂をかぶった雪渓の四方八方にクラックが入り、クレバスのようだ、踏み外したことを想像して足がすくむ。見渡して、比較的安全な場所を渡り、下山のことを考え、目印をつけながら進む。およそ1時間ぐらいでその場を抜け、沢巾の広くなった場所に出た。
  
  向かう稜線                               白馬尻手前から大雪渓

  
 土石流の爪痕                              土石流の爪痕

  
  亀裂だらけの雪渓                           陥没箇所

  
 山側では花が、シラネアオイ                               シラネアオイ

  
 ショウジョウバカマ                            キヌガサソウ

 大雪渓に描かれたベニガラの道の最上部は霧の中に消えていた。突然雪渓を横切る動物が視界に入る、日本カモシカである、早い早い、あっという間に雪渓を横断し、張りだした樹林の中に消えた。時々山際でガラガラと音をたてて石が落下している、時には50,60cmもありそうな大きな岩石がバウンドしながら砕かれて落下していた、距離が離れているので眺めていられるのは幸いだ。7:21大雪渓から小さな尾根、葱平( ねぶかっぴら )に入る、ゴツゴツした岩場をアイゼンを付けたまま歩く。歩きにくいけれど、足元だけ気をつければ雪渓と違い滑落の心配は無い。シナノキンバイ、ミヤマタンポポ、ミヤマオダマキが点々と咲く。

 7:40再び雪渓に出る、葱平( ねぶかっぴら )上部である。30mほどあったろうか、トラバースである。急斜面であり、下がまともに見えない。ベニガラのマークに沿って、ピッケルとアイゼンに身を託し、慎重に一歩一歩進む。クレバスの歩行も緊張したが、ここは時間が長い。渡ると間もなくに避難小屋に着いた、7:55。閉ざされた小屋は、深い雪に囲まれて沈んでいる小舟のように見えた。
  
 大雪渓                                  横断するカモシカ

 ここから雪渓をひと登りすると、この世の天国、お花畑が広がる、緊張感から開放され、吹出した汗に風の冷たさが身を刺す。雨具を身に付け、咲く花にじっと見入る、誰もいない、静かだ、吹く風は旋律を奏でているかのように聞こえる。ウルップソウ、ハクサンイチゲ、シナノキンバイ、ミヤマオダマキ、チシマアマナ、イワベンケイ、ミヤマシオガマ、等など咲き始めた高山植物が魅了する、霧も若干良くなって稜線が時々見えるようになった。
  
   シナノキンバイ、背面は霞む杓子岳               ハクサンイチゲ

  
    ウルップソウ                              ミヤマシオガマ

  
     ミヤマオダマキ                         イワベンケイ

  
  チシマアマナ                              ウルップソウ

 同年輩の4人のグループが下山してきた、状況を話し気をつけて下るように言った。間もなく長靴にヘルメット、長い棒切れを持った五人衆にあった、その人たちは、小屋の従業員か、出入りの大工さんと思われる。スイスイ下って行く、慣れたものだ、見ていて危険を全然感じない、面白いくらい、8:58村営宿舎着。周辺のウルップソウは咲き出したばかり、濃紫紺の太い花穂はズングリ、葉は波打っている。高山帯の礫地を好み、一時の夏を飾る美しさに、見る人は感動する。

 アイゼンをはずし稜線に出ると、間もなく旭岳の分岐にさしかかる、視界が悪く全く見えない、復路を考え体力の消耗は極力避けたい。残念ながら今回も旭岳は断念する、三度目の何とか、ということもあるから、次回は登らせてもらえるでしょう。左手のお花畑を気にしつつ進む、雲の動きは早く、白馬山荘が時々視界に入る。9:23山荘着、人影はない、大きな小屋も静まりかえっている、小屋の間を通り抜け、山頂へ直行する。

 天気は回復の兆しにあるのか、白い旭岳の裾が見えてきた、白馬の山頂も雲間に顔を出す、一瞬の青空に黒色の山頂が輝く、山頂は近い、また霧の中に消えた。強い風と砂礫の道に足は前に出ない、というよりは雲間の眺望が気になって、足でなく首が左右に大きく動いている。やっと、9:42白馬岳山頂着。

 猿倉から5時間17分を要した、疲れた、ザックをおろしパンにかじりつく。出発前にむすびを1個、雪渓の中間でみかんを1個食べたきりだ。流れる雲を追いながら眺望を楽しむ、沢山の雪を残す雪倉岳、小蓮華山、旭岳がチラリと映る、切り込んだ岩肌に沿って怪しく白い筋を見せる杓子岳、刻々と変化する景色にしばし見入る。
  
 白馬岳直下                               白馬岳山頂部

  
  白馬岳山頂                             旭岳、白馬岳山頂より

  
 小蓮華山方面、白馬岳山頂より                  雲の中の杓子岳、白馬岳山頂より

  10:00、下山開始、10:19旭岳分岐、ウルップソウの咲くお花畑の向こうにうっすらと旭岳の全貌を見た、誓う、いつかきっと。村営宿舎10:25〜10:34、アイゼンを再び付けて急斜面の下りに備える。去りがたいお花畑、1週間もするともっと花数も増えて賑わいを見せるだろう。きっと、あと来る人たちの心を和ませて、山の虜にしてしまうだろうな。小雪渓のトラバースも終わり、大雪渓も快適に下る、山頂へ向かう人たちと行き交う、皆汗ばんだ顔もなぜか生き生き映る。
  
 旭岳分岐点                               また会う日まで旭岳

 往路で悩んだ危険地帯も地元の関係者により、右岸山際に誘導するようベニガラがまかれ、登山道が確保されていた。小屋近くまで下ると、往路でつけた赤い紐が生かされていたのが嬉しい。日に日に姿を変える雪渓で、事故にでも会ったら元も子もない。雪渓を歩く楽しみも、常に危険と背中合わせであることを心したい。行くとき土砂に埋まっていた小屋も、土砂が取り除かれ、復旧に向かって、大勢の人が作業していた、白馬尻荘着12:28、猿倉駐車場着13:15。往復所要時間は8時間50分であった。旭岳は登れなかったが、緊張感の連続だった雪渓歩き、出会った花々、通り過ぎていった生き生きした顔、など等、次の山行のエネルギーになろう、また来るぞ。



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